読書感想文
僕は君たちに武器を配りたい
第1章勉強できてもコモディティ
どんどん広がる全産業の「コモディティ化」
・市場に出回っている商品が、個性を失ってしまい、消費者にとればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態 => 「コモディティ化」
・「個性のないものはすべてコモディティ」
あらゆるものが買い叩かれるコモディティの市場
・コモディティ化した市場で商売することの弊害=>「徹底的に買い叩かれること」
・コモディティ化するのは商品だけではない
・労働市場の人材評価においても、コモディティ化は避けられない。
・資格やTOEICの点数といったコモディティ化した人材市場でも、応募者の間で「どれだけ安い給料で働けるか」という給料の値下げ競争が始まる。
高学歴ワーキングプアが生まれる背景
「スペシャリティ」だけが生き残れる
・「ほかの人には代えられない、唯一の人物」
・「スペシャル」な地位は決して永続的なものではない。
・ある時期にスペシャルであったとしても、時間の経過に伴い必ずその価値は減じて
いき、コモディティへと転落していく
第2章「本物の資本主義」が日本にやってきた
「正しい人が勝つ」のが資本主義
・資本主義の社会でのお金の増やし方=>「より少ないコストで、みんなが欲しがるものを作った人」
・コストを削って作った商品はさらに魅力がなくなり、ますます売れなくなる。
産業が発展すると、労働者は・・・
・工作機械の制度向上で、熟練労働者が不要になった。コストを抑えるために安い賃金で雇える人を採用。=>貧富の格差が拡大 =>技術革命
賃金が下がったのは技術革新のせい
・コモディティ化した労働者がそこに入っても、高品質な製品が作れるようになったことが賃金下落の本当の原因
・産業の成熟化が進み、熟練労働者が必要なくなれば、労働者は必然的に買い叩かれる存在となる
国レベルでビジネスモデルが陳腐化した日本
・工作機械の進歩がすさまじく、中国に対して品質やコストで差をつけることが難しい
・日産の「1/100から1/1000の技術」のキャッチフレーズは経営戦略の致命的な誤り
・1/1000の違いを感じ取れるユーザーは存在しない。
・ユーザーが「分からない差異は差異ではない」。
「すり合わせ」はもう時代遅れ
・電気自動車は、制御装置を簡略化でき、部品点数も大幅に減らせる。
技術的ハードルが低く、新規参入容易。
・アップルのiphoneですら中国で作れる。
第3章学校では教えてくれない資本主義に現在
なぜほとんどの学生ベンチャーは失敗するのか
・一番よくある失敗は「コモディティ会社」を作ること
例)文系の学生が家庭教師の派遣会社を作る
理系の学生がシステム会社を作る
・多くの会社が乱立し、過当競争が起きていて、産業としては古い。
・たまたま成功しても、「労働力が若いため安い」「ヒマだから仕事が早い」と
いった一時的な競争力である。
・「ブームとなってから投資すると死ぬ」
・誰も投資など考えられない、焼け野原で投資して、誰よりも早く実った果実を回収する。
一寸先は闇の金融業界
・ビジネスで利益の果実を得られるのは、最初に参入した少数の会社のみである。
・外資系証券が日本の土地やビルを底値で買いあさり、2003年ごろからミニバブルで売り抜けて、莫大な収益を上げた。
投資は地面に死体が転がっている時に
・ロスチャイルド家の考え方「地面に死体が転がっているような不景気な時に投資し、まだ早すぎるというタイミングで売り抜けろ」
・
流行に乗るのは危険
・「現在絶好調な会社」に就職することは、言葉を変えると「数年後にほぼ間違いなく
輝きを失っている会社」に就職することとほとんど同義である。
・どんな素晴らしい会社も未来永劫その価値を維持し続けることはできない
・働く個人が常に経済的、社会的に高いポジションを維持するためには、次にどのビジネスモデルがせいこうするか潮流を見極めながら転職を繰り返すことが必然の行動である。
・投資の世界では「高すぎる株を買ってはいけない」というのが常識。
会社選び同じで、就職先が高すぎる状態になっていないか、よく考えてみる必要がある。
若者を奴隷にする会社
・「勘違いカリスマ社長が君臨し、イエスマンだけが役員に残り、社員はみな奴隷」
・商品自体がコモディティ商品であるため利益を出すには給料を下げて従業員を
搾取するしかない
・「うちの会社はお客さんが儲けさせてくれるのではなく、社員が儲けさせてくれている。
ニッチな市場に目を付ける
ダメな方法「業界全体で何万人の雇用が生み出されるか」ではなく
イイ方法「今はニッチだが現時点で自分が飛び込めば、数年後に10倍、20倍の規模になっているかもしれない」
・ビジネスモデルが「顧客をバカにしている」「馬鹿な顧客をターゲットとしている」会社は長期的に未来がない
第4章 日本人で生き残る4つのタイプと生き残れない2つのタイプ
儲かる漁師と儲からない漁師
・儲からない漁師:自分で何も考えず、ただ人に使われているだけの漁師
=>「単なる労働力」「コモディティ」
「資本主義社会の中で安い値段でこき使われず(コモディティ)にならず、主体的に
稼ぐ人間になるためには、以下の6タイプ」
・トレーダー:「体力と根性」型
・エキスパート:自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事する人
・マーケッター:「付加価値」をつけて、市場に合わせて売ることができる人
・イノベーター:まったく新しい仕組みをイノベーションできる人
・リーダー:自分が起業家となり、みんなをマネージしリーダーとして行動
・インベスター:投資的として市場に参加する人
価値を失っていく2つのタイプ
・「トレーダー」「エキスパート」
・「トレーダー」的な業種は、「右から左へ」と渡すことで稼いだ企業は経営が苦しい
・商社、旅行、広告などの「代理」業務を行う会社はインターネットの普及でビジネスモデルの構造転換が求められる
トレーダー、必死の生き残り策
・広告会社の花形:アカウントエグゼクティブと呼ばれる営業職のプロ
・AEが自社のマーケッター、クリエイター、メディアプランナーとチームを組んで広告を行ってきた
・多くの企業が広告費を縮小、広告制作費とメディア購入費のコストカットを代理店に要求
・クリエイター、マーケッターのような専門性を直接クライアントにサービスを提供できる人(例えば佐藤可士和)
エキスパート、変化に乗り遅れる
・変化のスピードが速く付いていけない
・専門知識を身に付けても、その先にあるニーズが社会変化に伴い消えると、知識の必要性自体が一気に消滅する
消えゆく業種でも「スペシャリティ」は稼ぐ道がある
第5章企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方
マーケターとは「顧客」の需要を満たす人
・望ましいのは、 1人のビジネスパーソンが状況に応じて、4つの顔を使い分けること。仕事に応じて、時にはマーケターとして振る舞い、ある機会には投資家として活動していく。
・マーケターとは「顧客の需要を満たすことができる人」
・大切なのは「顧客自体を新たに再定義すること」=「人々の新しいライフスタイルや新たに生まれてきた文化的な潮流を見つけられる人」
・マーケターは、自分自身で何か画期的なアイディアを持っている必要はない。
・マーケターは、かすかな動きを感じ取る感度の良さと、なぜそういう動きが生じてきたのかを正確に推理、分析
・マーケターは、「ストーリー」「ブランド」といった一見とらえどころのないふわふわした付加価値や違いを作れること
・資本主義社会では、革新的な商品を開発しても、すぐに別会社がコモディティ化してしまう。
・企業が衰退を避けるには、イノベーションを繰り返して、商品の差異を作り続けなければならない
猛烈なコモディティ化に対抗する唯一の手段
・全産業の「コモディティ化」が進む世の中で、唯一の富を生み出す時代のキーワードは「差異」である
・ 「差異」 = 「ストーリー」
・マーケターとは・・・「差異」=「ストーリー」を生み出し、発見し、適切な市場
を選んで商品を売る戦略を考える人
成功するビジネスには「ストーリー」がある
・マスコミで情緒的な言葉を使ったキャッチフレーズを使う理由は、マーケティング的な視点で考えると理解できる
・マスメディアは人口の多い層をターゲットにする。日本の労働人口は製造業従事者が最も多いターゲットである。したがって、その層の耳障りの良いストーリーをメディアは流したい。
・重要なのは「キャッチフレーズの中身」ではなく、「エモーショナルなストーリー」である
商品にストーリーを乗せて売る
・「レッツノート」のセールスポイントは、PCのスペックではない
・ただ単に製品としてのノートパソコンを売るのではなく、「できるビジネスパーソン」というイメージを、PCに乗せる売っている。
・Wiiが発売前にゲーム業界全体の売上は落ち込んでいたが、そこが1つ目のチャンスであった。2つ目のチャンスは、「1人で遊ぶ」=>「複数で遊ぶ」というコンセプトを考え出した。コンセプトがすぐれていた。
「欲しかった商品だ」「売れなかったら会社を畳む」ストーリー
・コンセプトがすぐれていてヒットした商品に「ポメラ」がある。
役員の全員が販売発売に反対したが1人だけ賛成してヒットした。
・「ポメラ」はごく一部の人にしか必要とされないが、熱烈に欲しがってもらえる商品という思いを救い上げて、それを商品という形に結実させたマーケターの感性が光る仕事であった。
ブランドにイメージを乗せる
・現代のビジネスではあらゆる業態で、いかにコモディティ化しないストーリーを商品で作り出すことが出来るかが死命を分ける。
・ユニクロもストーリーをつくることで成功した。
・柳井氏は「ファッションビジネスでは何よりブランディングが大切」ということに早くから気が付いていた
・グローバルに活躍するクリエイティブに強い広告代理店を活用
・佐藤可士和という第一線で活躍するアートディレクターにロゴデザインおよびCIを一任=>都会的、グローバルイメージを作る
・ユニクロの商品は「超コモディティ」である。大手小売チェーンが驚く価格で売ったが短期間で追いつかれた。しかし、「イメージ戦略」によって息を吹き返した。
・ファッションは「コモディティ」と相容れないが「イメージ戦略」によって「コモディティ」のブランド化に成功した。=>既存のファッションとは違う文脈で売ることに成功した。=>マーケティング戦略がユニクロの躍進の本質
・ユニクロは戦略的に自社のブランドを「効率的・合理的・洗練されている」イメージ付けた。
=>ユニクロの服を着ても「効率的・合理的なライフスタイル上の選択」と見えるようにした。
=>「安くてダサい服を着る人」とは見られなくなった。
=>ブランディングのためメディアに登場、経営システムの先進性・合理性を繰り返し訴えた
コストダウンと差異の両立
・スティーブジョブスも「イメージとストーリー作り」に長けた経営者であった
・IBMもブランディングに成功した。ハードだけでなくITサービスまで提供する「e-ビジネス企業」へと大きく舵を切った。
・2002年以降のIBMはコモディティ化したノートPC、ハードディスク部門を売却した
*企業や商品で差をつけることは難しい。差をつけるには、ターゲットとなった顧客が共感できるストーリーを作ること
*マーケターとは新しくない要素の組み合わせで「差異」を作り出せる人のこと。これからのビジネスは「差異」が左右する。
新市場で再帰を図るコモディティー企業
・コモディティー化によって、落ち目企業も、マーケティングに成功し、復活することができる。
・NOK:自分たちのスキルが市場価値を持つ新しい市場に打って出ようと考えた。
・ガラスメーカー:世界レベルで同業他社を買収して、スケールメリットで利益を出すことで生き残りを図ろうとしたが失敗。携帯屋にガラスを売ると車屋に比べて何倍もの利益を出すことが出来るようになった
*ある分野でコモディティ化したして価値を失った技術でも、まったく別の分野に応用することで新しい価値を生み出す可能性がある
個人の働き方にも重要なマーケティング的発想
・個人の働き方においても、マーケティング的視点で工夫することが「稼げる人」と「稼げない人」を分けるポイントとなる。
・資格を持っていることやTOEICの点数が高いといった「高性能・高品質」といったものを売りにする人は、もはや通用しない。
・マーケティング的な発想をすることで、自分の「適切な売り方」を変えることができる
・英語教師の事例:ダメ高校で英語教職に失望。英会話学校を企業したがビジネス英会話に対応できず、経営難。外国人向けの日本語教師になり大当たりした。
・短大の家庭教師の事例:「短大の家庭教師」に需要がなかった。「偏差値40以下の中学生だけを教える家庭教師」で大当たり。
*個人の働き方においても自分の「ビジネスモデル」を環境の変化に合わせて変えていくことが求められるのである。